「お母さん、これからの生活費は大丈夫だろうか」
父が亡くなったあと、私はそう思いながらも、なかなか口に出せずにいました。
この記事は、実際に77歳の母のお金の状況を整理して、「年金だけで生活できるか」を試算したリアルな体験談です。実際の家計データをもとに書いているので、同じような状況の方の参考になれば嬉しいです。

うちの場合の背景
父が84歳で亡くなり、母は遺族年金の手続きをする必要がありました。それ自体は無事に済んだのですが、問題はそれだけではありませんでした。
じつは、父が生前に投資詐欺の被害に遭っていたことがわかり、家族が思っていたより資産が大幅に減っていたのです。「年金だけで暮らしていけるのか」という不安が、一気に現実のものになりました。
そこで私は、母の収入と支出を一から整理し直すことにしました。

まず収入を確認する:月20万円の年金
母の収入源は年金のみで、年間240万円(月20万円)です。
父が亡くなったことで母の年金額が増えたという、少し意外な事実がありました。
父が亡くなると、配偶者には遺族厚生年金を受け取る権利が発生します。日本の制度では、自分の老齢厚生年金と遺族厚生年金を比較して、金額の多いほうを選ぶ仕組みになっています(厳密には、自分の老齢厚生年金を全額受け取りつつ、遺族厚生年金との差額分を上乗せして受け取る形になります)。
母の場合、父の遺族厚生年金のほうが自分の厚生年金より多かったため、こちらを選択することで受取額が増えました。父は75歳まで働いていたため、長年厚生年金を納めてきたことが、こうした形で活きたのです。
この金額が手続きを経て確定しました。まずこの「入り」を軸に、どこまで生活費をまかなえるかを計算していきます。
なお、母は持ち家に住んでいるため、家賃の心配がありません。これは老後の生活設計において非常に大きなアドバンテージです。賃貸の場合は月数万円の住居費が固定でかかるため、試算の前提が変わってきます。

ステップ1:毎月かかる支出を「固定費」と「変動費」に分ける
クレジットカードの明細と銀行口座の引き落とし履歴を整理し、すべての支出を書き出しました。
毎月・固定費の実例
| 費目 | 詳細 | 月額 |
|---|---|---|
| 税・社会保険(年金天引き) | 後期高齢者医療保険料 | 約7,000円 |
| 税・社会保険(年金天引き) | 介護保険料 | 約6,000円 |
| 税・社会保険(年金天引き) | 所得税・復興特別所得税 | 約1,500円 |
| 税・社会保険(年金天引き) | 住民税 | 約3,000円 |
| 水道光熱費 | 水道代 | 2,500円 |
| 水道光熱費 | 電気代 | 10,000円 |
| 通信費 | ソフトバンク光 | 6,713円 |
| 通信費 | Yモバイル(携帯) | 2,300円 |
| サブスク | 新聞代 | 4,350円 |
| 趣味・娯楽 | ピラティス | 2,000円 |
| 趣味・娯楽 | キルト教室 | 2,000円 |
| サブスク | YouTube Premium | 780円 |
※ 後期高齢者医療保険料・介護保険料・所得税・住民税は、年金から自動的に天引きされます。実際の振込額(手取り)はこれらを差し引いた金額です。金額は年金振込通知書で確認でき、所得や居住地によって異なります。上記は目安として記載しています。
※ 趣味の費用もしっかり固定費として計上しています。「趣味を我慢しながら生きる」試算では意味がないからです。
毎月・変動費の実例
| 費目 | 月額(目安) |
|---|---|
| 食費 | 30,000円 |
| 日用品・生活費 | 20,000円 |
| 衣服・美容 | 10,000円 |
| 医療・薬代 | 10,000円 |
ステップ2:「年単位・数年単位」の支出を月割りで積み立てる
毎月の収支だけ見ていると家計が成り立っているように見えても、年に一度や数年に一度発生する出費を忘れると、突然大きなマイナスが生じます。
母の場合、こんな不定期出費がありました。
| 費目 | 詳細 | 金額 | 頻度 |
|---|---|---|---|
| 税・社会保障 | 固定資産税 | 120,000円 | 年1回 |
| 税・社会保障 | 自動車税 | 29,500円 | 年1回 |
| 保険 | 火災保険 | 30,000円 | 年1回 |
| サブスク | NHK受信料 | 14,700円 | 年1回 |
| 住宅 | 庭木剪定 | 30,000円 | 年1回 |
| その他 | 墓管理費・霊園年間管理料 | 約18,000円 | 年1回 |
| 家電 | 冷蔵庫・洗濯機・テレビなど | 各100,000〜300,000円 | 10年に1回 |
| 住宅 | ユニットバス・エコキュート・屋根など | 各300,000〜500,000円 | 10年に1回 |
| 交際費 | 入学祝い・就職祝い・結婚祝いなど | 各50,000〜100,000円 | 不定期 |
これらを年間合計で計算し、12で割って毎月積み立てます。たとえば家電・住宅の修繕費は合計すると10年で約200万円以上になるため、毎月約1万7千円を別枠で積み立てておく計算です。
「まだ壊れていないから考えなくていい」ではなく、いつか必ず来る出費を今から準備するのが、老後家計を安定させるコツです。
ステップ3:収入と支出を並べて試算する
すべての支出を洗い出した結果、税金・社会保険料も含めた母の年間支出は約213万円という試算になりました(生活費約192万円+税・社会保険料約21万円)。
年金収入 240万円 ー 年間支出 213万円 = 年間黒字 約27万円
月換算すると、毎月約2万円の黒字です。
最初は「税金を含めたら赤字になるのでは」と心配しましたが、それでもプラスを保てることがわかりました。税金や社会保険料は見落としがちですが、しっかり含めた上でも成り立つとわかれば、より現実的な安心感につながります。
正直、試算を始める前は「絶対に赤字だろう」と思い込んでいました。でも、不定期出費も含めて丁寧に計算してみると、意外と年金の範囲内でやっていけることがわかったのです。家族全員が、本当にほっとしました。

黒字だとわかったら、貯金の使い方が変わった
試算の結果が黒字だとわかったことで、母の中でお金に対する考え方が少し変わりました。
それまでは「何かあったときのために貯金を絶対に崩せない」という不安から、好きなことへの出費に罪悪感があったようです。でも、毎月の生活が年金でまかなえるとわかれば、貯金は「緊急用」ではなく「楽しいことに使うためのもの」として捉え直せます。
旅行に行く、孫にプレゼントを贈る、友人と食事をする——そうした嬉しい出費に、計画的にお金を使えるようになりました。
やってみてわかったこと
①「見える化」は安心につながる
漠然とした不安の多くは、数字にしてみると解消されます。「いくらあれば大丈夫か」がわかるだけで、心の余裕が生まれます。
②「不定期出費」の見落としが家計崩壊の原因になる
毎月の収支だけ見ていると黒字でも、年に数回の大きな出費で赤字になるケースは多いです。家電の買い替えや住宅修繕まで月割り計算に入れることが重要です。
③ 趣味や楽しみも最初から予算に入れる
「節約すれば何とかなる」という試算は現実的ではありません。ピラティスやキルト教室など、生きがいになっている支出はちゃんと固定費として計上することで、リアルな家計像が見えてきます。
④ 早めに動くほど、選択肢が広がる
今回、父が亡くなってから慌てて整理しましたが、できれば生前から把握しておきたかったというのが本音です。
まとめ:3ステップで試算してみよう
父の死、投資詐欺の被害、遺族年金の手続き——重なるトラブルの中で、母のお金の状況を一から整理したことは、大変でしたが家族にとって本当に意味のある時間でした。
年金だけで生きていけるか不安な方は、ぜひ一度、次の3ステップで試算してみてください。
- クレカ・銀行明細から固定費と変動費を書き出す
- 年間・数年単位の不定期出費を月割りで計算する
- 月々の収入(年金)と支出を比べて黒字か赤字か確認する
数字にしてみると、きっと「意外となんとかなる」という発見があるはずです。
